はじめに
イギリス政府が2025年に公表したデータによると、2024年の日本国籍保持者に対する学生ビザ発給件数は前年比で約8%増加し、約3,500件に達しました。日本人留学生にとって依然として主要な進学先の一つです。しかし、渡航先の教育機関から入学許可を得ても、英国学生ビザ(Student Route)の申請段階で不備が生じ、ビザ発給が遅れたり却下されたりするケースが全体の約5%程度報告されています。ときに、資金証明の計算ミスやCAS番号の入力誤りといった単純なミスが原因となることもあります。申し込みの遅れは渡航時期のずれ込みだけでなく、納入済みのIHS(移民健康サーチャージ)や授業料の一部が返金されないリスクにもつながります。本記事では2026年時点の最新ルールに基づき、日本からイギリスへ渡航する留学生が準備すべき書類と手順を、時系列に沿って整理しました。これから出願を始める方はもちろん、すでにCAS番号を取得している方にも役立つ内容になっています。
CAS番号の基本と取得までの流れ
**CAS(Confirmation of Acceptance for Studies)**とは、イギリスの教育機関が発行する入学許可確認書の電子番号です。学生ビザ申請の際には、オンラインフォームにこの14桁の番号を入力する必要があります。CASは自動的に発行されるものではなく、入学予定校が学費の一部(通常は初年度授業料の50%以上、またはデポジットとして最低4,000ポンド程度)の支払いを確認した後に交付する仕組みです。2026年現在、多くの大学ではCAS発行の目安として、無条件オファー受諾後2〜4週間を見込んでいます。
CAS番号には、コース開始日や修了予定日、英語力の証明方法、すでに支払った授業料の金額など、ビザ審査に必要な情報が紐づいています。そのため、パスポート上の氏名とCASに記載された氏名が一文字でも異なると、生体認証予約がキャンセルされることがあります。また、CAS番号は発行から6か月以内にビザ申請に使用しなければ無効となる点にも注意が必要です。日本人留学生の場合、入学時期が9〜10月に集中するため、遅くとも同年6月末までにはCASを受け取るスケジュールを組むことをおすすめします。
資金証明の必要額と見せ方
イギリスの学生ビザ申請では、資金証明として、授業料と生活費を合計した額が指定口座に一定期間保有されていることを示す必要があります。生活費の基準額は、ロンドン圏内の大学では月額1,334ポンド(最長9か月分)、ロンドン圏外では月額1,023ポンド(同)と定められています。したがって、ロンドン圏外の大学に通う場合、授業料に加えて約9,207ポンドの生活費証明が求められます。2026年の為替レートを1ポンド=190円と仮定すると、授業料を含めて総額でおおよそ300万円から450万円程度の残高が必要になる計算です。
残高証明書は、申請日から遡って28日間以上、必要額を下回っていないことを銀行の正式な書類で証明しなければなりません。日本の金融機関で発行される英文残高証明書はそのまま利用できますが、ネット銀行のなかには発行までに1週間以上かかるケースもあるため、早めの依頼が重要です。なお、すでに授業料や寮費の一部を支払っている場合は、領収書を提出することで資金証明の必要額から差し引けます。また、日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金や民間奨学金の採用通知も資金源として認められる場合がありますが、事前に受け入れ先大学のCAS発行担当部署に確認しておくと安心です。最近では、日本の金融機関が発行する証明書のフォーマットがイギリスのビザ移民局の基準を満たしていない事例もわずかながら報告されているため、記載事項(口座名義、通貨単位、発行日)に抜けがないか、受け取り次第すぐに確認する習慣をつけましょう。
IHSの支払い手順と注意点
**IHS(移民健康サーチャージ)**は、学生ビザ申請者がイギリスの国民保健サービス(NHS)を利用するための負担金です。2026年現在、学生ビザ申請者向けのIHSは1年あたり776ポンドに設定されています。学部課程(3年)の場合は約2,328ポンド、大学院修士課程(1年)の場合は776ポンドに加えて、ビザが有効となる追加期間(コース終了後4か月)の日割り分が加算されるため、総額1,000ポンド前後を見込んでください。
支払い手順は、オンラインのビザ申請フォーム内でIHS専用の支払いページに進み、クレジットカードまたはデビットカードで決済する流れです。支払い完了後、IHS参照番号が発行されます。この番号はビザ申請の続行に不可欠なため、スクリーンショットや印刷で必ず控えておきます。一度支払ったIHSは、ビザが却下された場合や申請を取り下げた場合にのみ返金対象となりますが、申請内容に虚偽があった場合や、すでに入国していた期間がある場合には返金されません。ビザ申請を急ぐあまり、CAS受領前にIHSだけ先に支払うと、CAS情報とIHS情報のひも付けができず、審査が停滞する原因になります。支払いのタイミングはCAS取得後、ビザ申請フォームの入力を進めた段階が適切です。
ATASの対象分野と免除条件
**ATAS(Academic Technology Approval Scheme)**は、大量破壊兵器の拡散防止を目的とした学術技術承認制度です。対象となるのは、特定の理工系・医療系の大学院修士課程および博士課程で、具体的には化学、物理学、生物科学、工学、コンピューターサイエンスなどの一部専攻が指定されています。2026年のリストはイギリス外務・英連邦・開発省の公式ウェブサイトで公開されており、コースのCAH3コード(共通集計階層コード)が対象に含まれているかどうかで判断します。
ATAS申請は、CAS番号を取得する前に行う必要があり、審査には標準で20営業日(約4週間)かかります。大学の繁忙期である6〜8月はさらに審査が長期化する傾向にあるため、対象コースに合格した場合は早めに着手しなければなりません。一方、学部課程(学士号レベル)は原則としてATASの対象外であり、修士課程でも文系や社会科学系の専攻は対象外です。さらに、日本を含む一部の国からの申請者には、専攻が機微技術分野に該当しない限り免除が適用されることがあります。ただし、免除条件は年によって見直されるため、必ず大学の国際部が発行するオファーレターの記載を確認し、ATASが必要かどうかを最終判断するようにしてください。不明な場合は、大学側にメールで問い合わせるのがもっとも確実です。
ビザ申請後のスケジュール管理と渡航準備
オンライン申請と生体認証の予約が完了したら、ビザ決定を待つ期間に入ります。イギリス国外からの学生ビザ申請は、通常3週間以内に審査結果が出ると公表されていますが、2026年1月のデータでは約67%の申請が15営業日以内に処理されています。一方で、追加書類の提出を求められたケースでは、平均処理日数が25営業日を超えることも報告されています。そのため、航空券の手配はビザの発給が確認できてから行うのが安全です。
ビザが許可されると、パスポートにビネット(入国許可証)が貼付され、渡航後10日以内に指定の郵便局でBRP(生体情報在留カード)を受け取る流れになります。2026年現在、BRPの代わりにデジタル移民ステータスへの移行が進んでいますが、移行期間中は従来通りのBRPが発行されるケースもあるため、申請時に案内された方法をしっかりメモしておきましょう。また、渡航前には、イギリスの住所が決まり次第、警察署への登録が求められる国籍かどうかを確認する必要があります。なお、日本国籍の学生は警察登録の対象外ですが、滞在先の住所や連絡先を大学の学生管理システムに登録する義務は変わりません。ビザの条件を一覧できるUKVIのView and Proveサービスに早めにログインし、就労時間の上限(学期中は週20時間以内)や公的扶助の受給制限といったルールを事前に把握しておくと、渡航後のトラブル防止につながります。
よくある質問
Q1. 資金証明の残高が一時的に不足していましたが、大丈夫ですか?
ビザ審査では、申請日から遡って28日間、一度も必要額を下回っていないことが条件です。下回った日がある場合は、そこから改めて28日間の保有実績を作り直し、新たな残高証明書を提出する必要があります。入金のタイミングに注意し、生活費と学費の合計額を十分に上回る金額を維持してください。
Q2. 銀行の残高証明書は和文でも受け付けてもらえますか?
イギリスのビザ移民局は、英語またはウェールズ語で記載された公式書類のみを受け付けています。和文の証明書を提出する場合は、翻訳会社や公証人による英訳と、翻訳者の署名・連絡先の記載が必須です。時間と費用がかかるため、発行元の銀行が英文フォーマットを提供しているか、事前に確認することをおすすめします。
Q3. IHSを支払ったのにビザ申請が進められません。
IHS支払い後に発行される参照番号を、ビザ申請フォームに正しく入力していない可能性があります。また、CAS番号の入力が完了していないと支払いページに進めないため、先にCAS欄を埋めてからIHSの決済を行ってください。番号を喪失した場合は、UKVIのオンライン照会フォームから再発行を依頼できます。
Q4. ATASの申請結果が届かず、コース開始日に間に合わないかもしれません。
ATASの審査には通常20営業日かかりますが、申請時期が6〜8月に重なるとさらに長引くことがあります。結果を待たずにビザ申請はできませんが、まずは入学予定校の国際部に連絡し、遅延の可能性を伝えてください。大学によっては入学日の延期やオンライン授業での対応を検討してくれるケースがあります。
Q5. 学生ビザでイギリスに入国後、アルバイトはすぐに始められますか?
学期中は週20時間まで就労が認められていますが、就労できるのはコースが正式に始まってからです。入学前の期間や語学準備コースのみの期間は就労不可とされているため、雇用契約書の開始日には注意が必要です。また、自営業やプロスポーツ選手としての活動は禁止されています。
UNILINKに相談できる理由
UNILINKはオーストラリア政府公認のMARA(移民代理人登録機関)に登録された移民代理人と、QEAC(国際教育カウンセラー認証)資格を有する教育カウンセラーが在籍する留学アドバイザリーです。特定の大学や教育機関から独立した立場で、オーストラリアを中心にイギリスやアメリカなど海外留学に関する進路相談を提供しています。多くの場合、出願から入学手続きまでのサポートを、手数料なしでご利用いただけます(一部、所定の申請料が免除される可能性があるかどうかは、各教育機関の審査基準によります)。
シドニー、東京、マニラの拠点を通じて、年間1,000名以上の留学生の渡航準備を支援してきました。英国学生ビザの申請でも、CAS受領前の資金計画やIHSの計算、ATAS該当確認など、細かな疑問をプロのカウンセラーと一緒に整理できる点が特徴です。留学に関する質問や個別相談は、画面右下のチャットから気軽にお問い合わせいただけます。
参考資料
- イギリス政府公式サイト「Student Route Visa」: https://www.gov.uk/student-visa
- UK Visas and Immigration「Student visa caseworker guidance」(2026年版)
- イギリス外務・英連邦・開発省「ATAS情報ページ」: https://www.gov.uk/guidance/academic-technology-approval-scheme
- 日本学生支援機構「海外留学のための奨学金情報」: https://www.jasso.go.jp/ryugaku/scholarships/index.html
- イギリス政府「NHS Healthcare for international students」: https://www.nhs.uk/nhs-services/international-students/